東野圭吾さんの新作が文庫本で発売されたので、すぐに購入して読んでみました。
ドラマで福山雅治さんが主人公を演じる「ガリレオ」シリーズの最新作。今回は湯川先生の秘密(?)にもつながる物語のようなので、ガリレオ好きの自分にとって読むのがとても楽しみな作品でした。
読んだ感想は「やっぱりガリレオシリーズは面白い!」です。草薙と湯川先生の会話だったりドラマの影響だったり、物語が進んでいく情景がはっきりと思い浮かんできます。
ガリレオシリーズですが今回は物理学的な要素は少ないため、普通のミステリー小説として楽しめると思います(そう考えると加賀恭一郎シリーズのほうが近い印象かもしれません)
最後には「重命る(かさなる)」という短編小説も書かれていて、ここでは「透明な螺旋」とは関係ない事件が描かれています。この短編もとても面白く、約30ページと短いにもかかわらず読み応えのある内容になっています。
「水天宮」や「遺産」という言葉が出てきたあたりで、もしかしたら・・!と結末が分かってしまったので、自分は小説の読みすぎかもしれません。
表紙の帯に書かれていた「東野圭吾を爆流(ばず)らせろ」という、読者が新作のタイトルを考える企画も面白そうです。SNSが普及した今ならではの企画ですね。
自分も応募してみようと思います(10月までなので考える時間が1ヶ月しかない・・!)
ここからは物語の内容とは離れたことについてメモを残しています(自分が気になった文章など)
まずは内海が湯川先生に向けた言葉。
誰もが先生みたいに合理的に行動できるわけではありません。
非合理だとわかっていながら、どうしても間違った道に進んでしまうこともあるのではないでしょうか。
殺人事件が起こるミステリー小説では、「なぜ行動を起こしたのか」という動機を明らかにしていく過程が外せません。
その中で衝動的に非合理な選択をしてしまうことが多かったり。
非合理的な選択をしてしまう人間の性質については、以前読んだ「行動経済学が最強の学問である」にも同じようなことが書いてありました。
この本が書かれたのが2020年以降なので、コロナが流行り出した世界を描いているシーンも多くありました。
- 感染症予防でマスクをしていることが多いけど(p63)
- 講義も学生の指導もリモートで可能だ(p91)
- テレワークが推奨されるようになって、首都圏からそういうところ(地方)に移住した人も多い(p162)
時代の移り変わりを表現しているのは、2020年に発売された「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」にも似ていますね。
インターネットの普及について書かれている部分も。
- もうずいぶん前からテレビを見なくなった。ニュースも芸能ネタもスポーツの結果も、すべてネットで事足りる。(p167~)
- いざスマホの電源を切ってみると、想像以上に生活のあらゆる面で依存していたことに気づかされた。今の状態をひと言で表せば、「何もできず何をしていいか分からない」ということになる。(p167~)
- テレグラムをはじめ、やりとりした痕跡が残らないアプリが増えた(透明な螺旋 重命るより引用)