【感想】傲慢と善良/辻村深月

こんにちは、もっちーです。

今回は「傲慢と善良」を読んだ感想を書いていきます。

紹介文には「恋愛ミステリーの傑作」と書かれていますが、ミステリー要素は薄めになっていて、恋愛に重きを置いて人生観について書かれた作品だと思います。

2人の主人公(男性・女性)の視点からストーリーが描かれていて、それぞれの心の中に「傲慢さ」と「善良さ」が潜んでいる状態です。

固定観念から脱げ出せずに大人になったことで、これまで褒められていた善良な考え・振る舞いだけでは良い未来を得られなかったり。

ときには傲慢な行動に出ることも、モヤモヤした現状を変えるためには必要なのではないでしょうか?

文庫本の解説に書かれていた朝井リョウさんの文章にも、心を打たれるような表現がありました。

詳細はこちら(全文)

数多いる種の中でもヒトだけが
自分のなんとなくの寿命、ある程度の未来と必ず訪れる死を把握しながら生きている

私たち人は何かを選ぶとき、どうしたって未来や死から逆転する思考を働かせてしまう

未来や死のことは分からないのに
分からないものを起点に逆転させられているのだ

いわゆる他人が過ごしてきた世界を参考にすることで、自分の未来を決めようとしているのだと思います。

失敗しないように周りの一般的な人に合わせた生き方に近づいていくのではないでしょうか?

https://twitter.com/mnao_daily/status/1877928544493576304

まわりが決めた固定観念にとられずに行動することで、自分で未来を選択して気持ちになれてポシディブに生きていけるのだと思います。

同じような「固定観念」や「同調圧力」にフォーカスしている作品では、朝井リョウさんの「何者」と似ているかもしれません。

傲慢と善良」の大きなテーマは「結婚」になっていますが、どうやって生きていくか自分の気持ちを全体的に見つめ直せるようなセリフが多く書かれていました。

人生に何かしらの漠然としたモヤモヤ感を感じている人には、心に刺さることが溢れていると作品だと思います。

最後に自分が心に刺さった文章を、それぞれメモとして残しておこうと思います。

自分のに見える範囲にある情報がすべてで
その情報同士をつなぎあわせることには一生懸命だけど
そこの外に別の価値観や世界があることには気づかない

p156

大らかな鈍感さを持って
深い考えなしに人と接することができるのは
ある種の才能のようなもので「家族」に向いている

p206

自分の意思や希望はないのに
好みやプライドと小さな世界の自己愛があるから
自由になれない。いつまでも苦しい。

しかし、この世の中に「自分の意思」がある人間は
果たしてどれだけいるのだろうか

p283

多くを望まないで生きてきて
そうであるがゆえに「自分がない」と言われてしまう

p296

孤独な恋が似合う、って書いてたよね
マイナスのことを書く時でさえ、自分のことを「似合う」って言葉で肯定する
自己評価は低いくせに、自己愛が半端ない
ずっといろんなことから逃げてきたんだと思う

p324

興味のある人はぜひ読んでみてください。

著:辻村 深月
¥850 (2025/01/08 17:07時点 | Amazon調べ)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次